平成17年3月15日、京都市左京区の京大会館で国内外の大学、公的研究機関、企業の研究者約
50人を集め「保存処理木材の環境へのインパクト国際シンポジウム」が京都大学生存圏研究所主催で開催されました。
CCA処理木材等の識別装置のデモンストレーション
ハンドヘルド蛍光X線分析計/日本電子株式会社(Innov-X Systems USA製)とウッドスキャンTD-1000 反射式近赤外線CCA判別装置/ハイウッド株式会社の装置がCCA処理木材等の識別装置としてデモンストレーションされた。
講演内容の解説
@CCA処理木材中の薬剤成分の存在
京都大学生存圏研究所 畑 俊充
熱分解中の木炭残渣内のCCAエレメントについて、電子顕微鏡を用いて観察および分析を行った結果について発表された。
畑先生の研究グループはCCA木材をより安全に再利用、もしくは廃棄するために、木炭内への砒素の閉じ込めを可能とする熱分解について研究してきたが、100%閉じ込められているか疑問であるため、熱分解時の砒素の挙動について観察、検討を行ったとの報告があった。その結果、熱分解残渣中に見られる粒子が10nm〜50nmの球状で、ほとんどの粒子がCr2As4O12からできていることが明らかになったとのことであった。
加熱炉中ではCCA木材から析出するナノサイズの砒素化合物や重金属の酸化物が木炭残渣中に残るだけでなく、煙中にも多種類の砒素化合物が含まれるため、ナノサイズの粒子をミクロンサイズの空隙をもつバグフィルターで除くことは不可能で、加熱炉中にも重金属や砒素を含む結晶化物が拡散されるので充分な注意が必要であり、焼却処理における危険性について注意する必要性を述べられた。
A保存処理木材に由来するホウ素の環境内挙動
京都大学生存圏研究所 中山友栄 , 吉村 剛
ホウ素は人間に対しては高い安全性を有するが、処理剤から容易に溶脱するため、廃棄時には環境への物質の流出が懸念されていることから、ホウ素の環境内挙動について発表された。
ホウ素の安定同位体比によって処理の有無を確認する方法および調査結果について講演されたが、海外から輸入される(主に中国、東南アジア等)ほとんどの家具、木製品においてほぼ全ての材で天然のホウ素安定同位体比より大きな値が認められ、ホウ素含有防腐剤の使用が示唆されたとのことであった。ホウ素を含む防腐剤は、数多くあり、その中にはCCBなど重金属も含むものもあり注意を必要とする報告がされた。
BインドにおけるCCA処理木材の使用実態
京都大学生存圏研究所 Tarakanada Bollineni
木材は、鋼鉄、アルミ、繊維補強プラスチックなどの材料に比べ安価および加工のしやすさからインドにおいて広く使用されている。しかし、インドのような熱帯(特に水生環境)において、木材は種々の自然界生物による被害を受け、その結果、大きな財政的損害が発生している。これとは別に、インド政府は天然森林からの切り出しを厳しく規制しており、使用される材木は植林された木材と輸入木材(マレーシア、オーストラリア、ニージーランド、ミャンマー、アフリカ諸国等から)が主となっている。しかし、植林木は早く成長させるため、自然界生物による被害を受けやすく、耐久性が劣っており、約10種の化学防腐剤が使われている。その量は、年間2000t以上になっている。特に、CCAは効果が長く、比較的安いため、広く使われているとの報告があった。
船舶への利用、ゴムの木、竹、ベニア板、パーチクルボード等への化学防腐剤使用の実例を含め、実情を紹介された。
現在、砒素系の防腐剤の利用による環境問題を解決するため、多くの研究組織が非砒素系防腐剤の研究しており、種々の防腐剤が開発され、実験されている。
環境面に安全な防腐剤の開発は、木材寿命を延ばすことにより、森林資源の減少を抑制することができ、それが生態系のバランスに寄与すると述べておられた。
最後に、ガンジス川水系等での自然界からの砒素汚染による中毒による人体被害の深刻な状況が写真にて説明された。
C使用中および再利用されたCCA処理木材にかかわる非職業的な砒素暴露
マイアミ大学 柴田知幸
砒素とクロムは人の発ガン物質として知られており、特に砒素は毒性が高いにも関わらず、CCAは木製の遊具、デッキ、囲い等に最も広く使われた保存剤であるため、木材との接触による非職業的な砒素暴露および砒素に汚染された地下水を飲む危険性について指摘され研究報告がされた。
例として、子供がCCA処理された屋外遊具で遊んだ場合における経皮、経口による暴露の状況、降雨によるCCA処理デッキや根被い等よりの砒素の流出量と地下水への影響をフロリダにおける状況を例に報告された。地下水位が比較的高く土壌も砂質分の多いフロリダでは非常に深刻な問題であり、非常に高いレベルでの研究がなされており聞いていても危機感を感じた。
(右上に続く)
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D金属系保存剤を含んだ廃材の処理および管理選択
マイアミ大学 Helena Solo-Gabriele
アメリカの廃木材の処理について講演された。
アメリカはCCAの使用を2004年1月に禁止したが、日本の禁止から8年経っており2020年前後に、排出のピークになる。
CCAの処理の方法としては、「除去と制限」、「希薄化」の二つの方法(管理)がある。
「希薄化」とは、アメリカの場合、根被い(マルチング)・埋め立て・焼却である。根被いについては、チップ化したもので公園等の樹木の周りの地表を被うことであるが、重金属防腐剤を分別していない状態で使用していたため、フロリダ地区の地下水に深刻な影響が出ているとの報告がされた。埋め立てについても、木材からの溶出等の危険性が考えられる。焼却については、木材中に含まれる3価のクロムが6価に、5価の砒素が3価にと共に毒性の強い物質に変化するため、灰の処理・大気中への有害物質の放出の危険性を報告された。CCA含有木材の再利用についても方法としては考えられるが、結局問題の先送りになるとの考えで、否定的な報告であった。アメリカの場合、CCAの使用濃度が、海岸部などの場合日本に比べ10倍以上と非常に高いため危険性も高いようである。
「除去と制限」とは、確かな規制による木材の流れと重金属の流れを制限することと定義。
廃木材を識別・分離し、有害な金属系保存剤を含んだ廃材は、バクテリア等による処分・化学抽出・電気化学的処理・熱化学的な処理を行うなどの方法により安全に処理する必要がある。
アメリカでは、識別の方法として、工場レベルでレーザーあるいは蛍光X線による識別、フィールド用として携帯用蛍光X線分析計が紹介された。
法制化のレベルも各国によって差があり、ドイツ等は最も厳しく、アメリカ、日本などが最も規制が緩やかとのことであった。
いずれにしても、識別をしつかり行い、安全なものをリサイクル・リユースすることが大切であることを説明していた。
DCCA処理建築木材の排出量推計
森林総合研究所 物性研究室長 外崎真理雄
CCA廃木材の今後の発生予測を行った結果について報告。
推定の根拠となったデータは防腐工業会のものを使用し、今後の発生予測を行い、2015年をピークにほぼ排出が終わるのに2141年までかかるとの試算をされていた。
また、建築廃材の発生量に比較し、CCA廃木材の発生量は少ないので、高濃度の生物暴露がなければ問題ないとの見解を話された。リユースや下地ボードへの利用も肯定され、焼却についても問題なしとの見解を示された。
講演終了後、複数の研究者の先生・企業の方のお話を伺ったが、
>防腐工業会のデータのみを使用し、表に出ない輸入木材の量については反映されていない。
>木材チップ中へのCCA木材の混入は偏在するため、多いときには30%にも達する報告がなされているのに平均化したデータで話をしても実情に沿わない。
>CCA木材の木製品へ再利用は、問題の先送りと拡散の増大につながり問題が多い。
>焼却の危険性について、多くの研究者が報告している中で、安全だと言っても単なる思い込みにしか思えない。
>すでに、排出量に関する報告は、実態調査を通して推計されたものが報告されており机上の推計を出されても意味がない。
等のお話がでて、森林総研と言う木材利用のトップにある研究所の報告としては如何なものかとの意見も聞かれた。
E新規抽出方法によるCCA廃材の毒性緩和
住友林業(株)筑波研究所 柿谷 朋
CCA木材の無害化の方法として、アルカリシュウ酸による溶媒抽出(キレート抽出)プロセスについて講演された。
その結果、溶液の濃度・pH・反応温度等をコントロールすることで、抽出効率を最大にすることが可能になるとのことであった。
更に、環境に配慮した資源循環プロセスを設計するために抽出した液相から金属とキレート剤を回収し、再循環するプロセスを検討しているとのことであった。
F砒素により汚染された水環境の浄化
オルレアン国立科学研究所(フランス) 古屋仲秀樹
砒素における水環境汚染は、バングラディシュ・ベンガル・西インド・中国等、世界的に広がりを見せており、世界的に問題となっている。この砒素に汚染された水を浄化する技術について講演された。
水素化したメソポーラスマンガン酸化物を使用することによって、砒素に汚染された水から砒素錯体を除去することが可能であるとの報告がされ、更に有効性の向上と、実際の水処理システムへの適用方法について検討を行うとの報告がされた。 |